離婚後、老後の生活設計において大きな不安の一つが「年金」です。特に50歳以上の方にとって、これからの生活を支える年金は非常に重要な収入源です。
しかし、離婚によって年金の受給額が変わる可能性があるため、年金制度をしっかり理解し、適切な対策を立てることが欠かせません。
本記事では、日本の年金制度の基本構造を解説し、離婚後の年金生活にどう影響するのか、そしてその対策について詳しく見ていきます。
※本記事で「年金」と書いているのは老齢年金のことです。
日本の年金制度の基本
日本の公的年金制度は大きく分けて2つの柱で成り立っています。給付の種類は老齢・障害・遺族があり、それぞれ給付を受けるための受給要件があります。
国民年金(基礎年金)
日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度で、主に自営業者や専業主婦が対象となります。
満額受給するためには、最低でも40年間保険料を納める必要がありますが、受給額は一律です。
2024年度の満額は年額816,000円、月額68,000円です。
厚生年金
会社員や公務員が加入する制度で、国民年金に加えて支給される年金です。
支給額は報酬や勤務年数に基づいて決定され、加入期間が長ければ長いほど、報酬が高ければ高いほど(報酬の上限あり)受け取る年金額も多くなります。
老齢年金の受給要件
老齢年金を受給するためには、原則として10年以上の納付期間が必要です。
この期間には保険料を納めた期間だけでなく、免除期間や合算対象期間(カラ期間)も含まれます。
合算対象期間とは簡単に言うと、10年の受給要件を満たさない場合、年金額には反映しないけれど、受給資格を満たすために含める期間です。例えば長期海外に住んでいた期間や昭和61年4月以前に専業主婦(夫)だった期間などです。
離婚後の年金分割と影響
離婚した場合、特に考慮すべきは「年金分割制度」です。
これは、結婚期間中に配偶者が会社員や公務員として厚生年金に加入していた場合、その年金の一部を離婚後に分割して受け取ることができる仕組みです。
離婚時の年金分割の仕組み
年金分割には以下の2種類があります。
- 合意分割:夫婦間の合意に基づいて、婚姻期間中の厚生年金を分割する制度です。
- 3号分割:配偶者が国民年金の第3号被保険者であった場合、平成20年4月以降の婚姻期間についてのみ、配偶者の厚生年金を分割します。
離婚後の受給額への影響
年金分割を受けると、自分が直接納めた保険料に加え、婚姻期間中の配偶者の厚生年金の一部も受け取ることが可能です。
ただし、受給額は状況によって異なり、特に婚姻期間が短い場合など、受給額が少ないことがあります。
遺族年金は再婚すると「失権」、つまり遺族年金を受給する権利がなくなりますが、いったん年金分割をすると元配偶者が後に死亡しても、本人が再婚しても失権しません。
離婚後の年金生活を考える
離婚後の年金生活を安心して送るためには、早い段階から準備をすることが重要です。
特に50歳以上の方にとっては、退職や年金受給開始が近づいてくる時期ですので、以下のステップを意識しましょう。
- 年金分割の手続き:離婚時に年金分割の手続きを確実に行うことが、将来の受給額を大きく左右します。
離婚日から2年以内に行う必要があります。 - 老後のライフプランのの作成:将来の生活費や住居、医療費などをシミュレーションし、具体的な計画を立てましょう。
生活費、特に固定費の削減や医療保険の見直しや住居費の見直しなど積極的に検討しましょう。 - 資産運用や副収入の検討:離婚後に年金だけで生活することが難しい場合は、資産運用や副業を考えることも検討するべきです。
低リスクの投資信託などを利用し、少しでも年金を補填するための資金を増やしたり、パートタイムで働くことで年金以外の収入を得ることが出来ます。
離婚後の年金生活は、事前の準備と計画が重要です。
日本の年金制度の基本を理解し、離婚による年金分割をうまく活用することで、老後の生活を安定させることができます。
年金額の確認や生活費の見直し、さらに資産運用や副収入の確保も併せて検討し、将来の安心した生活に備えましょう。