2024年は公的年金制度にとって重要な年です。
5年に一度の財政検証が行われ、その結果をもとにした法改正が2025年に予定されています。
この改正は、少子高齢化や経済状況の変化に対応し、年金制度の持続可能性を確保するためのものです。
特に離婚後の生活設計を考える際には、年金制度の動向を把握しておくことが重要です。
本記事では、2024年の財政検証の結果と、それに基づく法改正のポイントを解説し、離婚後の生活にどのような影響を及ぼすのかを考えます。
年金法改正とは? 2024年の年金法改正について
年金法改正とは
年金法改正とは、公的年金制度を取り巻く社会経済状況の変化に対応するために行われる法的な変更です。
具体的には、少子高齢化の進展や労働市場の変化に対応し、年金制度の持続可能性を確保することを目的としています。
年金法改正を決める年金部会は、厚生労働省の下に設置された社会保障審議会の一部であり、公的年金制度に関する様々な議題を検討する場です。
年金部会は毎年開催されるものではなく、必要に応じて開催されます。
年金法改正は今の年金制度を続けるために行います。日本の年金制度は年金を受給している人を年金を払っている人が支える賦課方式のため、少子高齢化が進む日本では重要な改正です。
2024年の年金法改正について
年金額の引き上げ
2024年度の公的年金の支給額は、前年度に比べて2.7%引き上げられます。
これは物価や賃金の伸びを反映したもので、2年連続の増額となります。ただし、年金額の伸びを抑えるための「マクロ経済スライド」が2年連続で発動されるため、増加率は実際の賃金の伸びに比べて0.4ポイント目減りしています。
年金の支給額は【年金額改定率】によって決まります。この改定率は毎年、物価と賃金の変動に応じて見直されます。
【マクロ経済スライド】は年金を持続可能にするための仕組みです。少子高齢化の日本で年金を貰う人が増えて、払う人が少なくなっているので、年金をそのまま払い続けると国の財政に負担がかかります。そこで、年金を支払う仕組みを調整し、将来も年金が続くように考えられました。
簡単に言うと年金の増え方を少しずつ抑える仕組みです。
社会保険の適用拡大
2024年10月1日からは、特定4分の3未満短時間労働者に対する社会保険の適用対象範囲が拡大されます。
具体的には、適用対象となる従業員数の基準が常時101人以上から51人以上に引き下げられます。
【短時間労働者】とは「週の所定労働時間20時間以上・継続して2ヶ月以上の雇用が見込まれること・月額賃金が88,000円以上・学生でない」労働者のことです。この改正により厚生年金に加入する人が増える見込みです。
財政検証とは? 2024年の財政検証について
財政検証とは?
財政検証とは、政府が原則として5年ごとに行う、国民年金および厚生年金の財政に関する現況および将来の見通しを作成するプロセスです。
この検証は、年金制度の長期的な健全性を確保するために不可欠であり、人口動態や経済成長、労働力の変化などの社会経済的な要因を考慮して行われます。
財政検証の目的は、現行の年金制度が将来的に持続可能であるかを評価し、必要に応じて制度改革の基礎資料を提供することです。
具体的には、所得代替率や年金財政の収支の見通しを点検し、制度の問題点を検証することが含まれます。
この検証結果は、厚生労働省が公表し、年金制度改革の議論に活用されます。
簡単に言うと「今の年金制度が将来もちゃんと続けられるのか?」を確認するための調査です。
2024年の財政検証について
2024年の財政検証で特に注目すべきポイントは以下の通りです。
- シナリオの簡素化:
財政検証では、経済成長の見通しに基づくシナリオが前回の6つから4つに減少しました。これにより、シナリオの理解が容易になっています。具体的なシナリオは、「高度成長実現」、「成長型経済移行・継続」、「過去30年投影」、「1人当たりゼロ成長」の4つです。- 高度成長実現ケース:
経済が高成長を遂げるシナリオで、年金制度に対する影響を評価します。 - 成長型経済移行・継続ケース:
経済が成長型に移行し、その成長が継続するシナリオです。 - 過去30年投影ケース:
過去30年間の経済成長率を基にしたシナリオで、将来の見通しを評価します。 - 1人当たりゼロ成長ケース:
経済成長が見られない、あるいは非常に低い成長率を仮定したシナリオです。
- 高度成長実現ケース:
- 所得代替率の見通し:
成長型経済移行・継続ケースでは、所得代替率が現在の61.2%から57.6%に低下する見通しです。ただし、低下幅は前回の検証よりも改善されています。 - マクロ経済スライドの調整:
マクロ経済スライドの開始・終了年度の見通しでは、成長型経済移行・継続ケースで2037年度に終了する見通しとなり、前回よりも早期化されています. - 年金額の新たな指標:
これまでのモデル年金に加え、一人分の平均年金額と年金月額の分布が公表され、世代ごとの比較が可能になりました. - 基礎年金の給付水準:
基礎年金の調整期間が長期化し、給付水準が低下する懸念があります。過去30年投影ケースでは、2057年における対物価の基礎年金が月額5.35万円に減少する見通しです。
①のシナリオとは経済の成長の見通しを元に4つのパターンで考えるって事です。
②の所得代替率とは簡単に言うと、年金でもらえる金額が働いていた頃の収入の何%かを表します。
③マクロ経済スライドの仕組みは2004年(平成16年)に少子高齢化に対応するため年金制度改正によって導入されました。今現在、マクロ経済スライドの調整期間中です。
⑤少子高齢化が進み、年金を支える人が減るということが一番の原因です。支える人が減ると国の年金財政の負担も増えます。今でも国は半分負担しています。
2025年の年金法改正について
財政検証の結果をふまえて、2025年に改正される可能性のある議題を紹介します。
- 65歳以上の在職老齢年金の仕組みの撤廃
65歳以上の厚生年金に加入しながら働いている、年金(厚生年金)受給者は一定以上の賃金を超えると年金の一部または全部が停止になる仕組みが存在しますが、これを撤廃することが検討されています。 - 短時間労働者への適用拡大
2024年法改正によって従業員51人以上の企業規模の短時間労働者は厚生年金の加入対象となっていますが、企業規模要件を撤廃することが検討されています。 - 企業年金関連
企業が従業員のために拠出する年金額の上限を引き上げることが検討されています。これにより、従業員はより多くの年金を積み立てることが可能になります。年金を受け取る際の税制についても見直しが検討されています。これにより、年金受給者が受け取る年金額が増える可能性があります。
最も関心の高かった「基礎年金の納付期間延長と給付増額」は今年の財政検証と法改正では見送る、ということになりました。納付期間を40年から45年に変更し、その分年金額は増えるということでしたが、財源の確保が難しいということで見送りとなったようです。
離婚後の生活に及ぼす影響と対策
熟年離婚後の生活設計を考えるうえで、年金は老後の安定を支える重要な柱です。
しかし、年金制度の変更や見直しが将来に大きな影響を与える可能性もあります。
「年金給付水準の低下」や「受給開始年齢の引き下げ」などの変更は、現実的に検討されることがあるかもしれません。
とはいえ、ネット上で話題になっている「遺族年金の改悪」や「配偶者加給金の廃止」といったキーワードだけで、不安にかられたり、煽られたりしないようにしてください。
正しい年金制度の知識を身につけ、デマや噂から自信をを守ることが大切です。