熟年離婚を考える際、多くの人が気にするのは「お金」の問題です。
特に離婚後の生活費や年金の受け取りが、経済的な安定に大きく影響します。
パートタイムや専業主婦として働いている人にとっては「103万の壁」や「106万の壁」といった収入の制限も大きなポイントになります。
これらの壁を理解しておかないと、離婚後の再スタートに影響が出るかもしれません。
この記事では、熟年離婚に関わる収入制限のポイントを詳しく解説していきます。
103万の壁とは?
103万の壁とは主に所得税に関連する基準です。
給与所得の場合、給与所得控除55万、基礎控除48万の合計金額です。
この金額を超えると所得税が課税されたり、配偶者控除から外れることになります。
所得とは収入から必要経費を差し引いたもので、どのような収入かによって10種類に分けられます。
- 利子所得→預貯金や債権の利子など
- 配当所得→株式の配当金など
- 不動産所得→不動産等の貸付による賃料など
- 事業所得→事業から生じた所得
- 給与所得→会社員の給与、賞与など
- 退職所得→退職金など
- 山林所得→山林伐採の譲渡による所得など
- 譲渡所得→資産の売却等で得た所得
- 一時所得→生命保険の満期保険金、解約返戻金など
- 雑所得→公的年金や副業、その他の収入
給与所得は給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いた金額です。
給与所得控除は収入金額によって段階的に計算され、162.5万円以下は55万円、850万円超は195万(上限)となります。
103万の壁で言われている給与所得控除は55万円です。
所得金額から差し引けるのが所得控除です。
全15種類、人的控除(人に対する控除)8種類と物的控除(支出等に対する控除)7種類です。
103万の壁で言われている基礎控除は一定の所得内であれば誰でも受けることができる控除です。
合計所得金額が2,400万円以下であれば控除額は48万円、2,500万円を超えると適用されません。
基礎控除、配偶者控除、扶養控除などは人的控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、寄附金控除などは物的控除です。
この所得控除が増えると課税される所得金額が減るため、税負担が軽減されます。
106万の壁とは?
106万円の壁は、社会保険(厚生年金や健康保険)に関する制限です。
収入が106万円を超えると自分で社会保険に加入する必要が出てきます。
106万の壁を超え、社会保険加入の対象となる条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8.8万円以上
- 雇用期間の見込みが2カ月以上
- 学生ではない
- 事業所の従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)
106万の壁を超え、社会保険加入するメリット
- 受給する厚生年金の金額が増える
- 病気、怪我で長期に仕事を休む場合、傷病手当金を受給できる
- 健康保険料が安くなる場合もある
- 年収の壁を気にせず思い切り働ける
106万の壁を超え、社会保険加入するデメリット
- 給与から社会保険料が引かれるため手取りが減る
- 同じ手取り額を維持するためには、より多く働く必要がある
まとめ
離婚後、パートで働く場合でも、これらの壁を意識しないと経済的な不利益を被る可能性があります。
しかし、逆に言えば、壁を理解した上で正しい働き方を選べば、無駄な税金や社会保険料を抑えることができ、計画的な生活設計が可能になります。
副業収入がある方は、一番安い賃金で社会保険に加入することで、健康保険料の負担を軽減しつつ、将来的な厚生年金額を増やすことも可能です。
少子化が高齢化が進む日本では、社会保険料の負担が今後増えることが予想されますが、自分の生活を守るためにも、正しい知識を身につけることが大切です。